破産・倒産・事業再生の基礎知識

貸出条件緩和債権・要管理先と実抜計画

貸出条件緩和債権とは

貸出条件緩和債権とは、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取り決めを行った貸出金をいいます。
銀行法等に基づいて、各金融機関は、元利の回収に懸念のある「リスク管理債権」の開示を求められています。リスク管理債権は、回収懸念の強いものから、(1)破綻先債権、(2)延滞債権、(3)3ヶ月以上延滞債権、(4)貸出条件緩和債権に区分されます。したがって、貸出条件緩和債権に該当するか否かは、正常な債権とリスク管理債権を区分する非常に重要なメルクマール(区分基準)となります。

リスク管理債権の分類

分類 内容
(1)破綻先債権 会社更生法、民事再生法による更生・再生手続開始の申立て、破産の申立て又特別清算開始の申立てなどの事由が生じている貸出金
(2)延滞債権 元本又は利息の支払の遅延が相当期間継続していることその他の事由により、元本又は利息の取立て又は弁済の見込みがないものとして未収利息を計上しなかった貸出金(債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として利息の支払いを猶予している貸出金を除く。)
(3)3ヶ月以上延滞債権 元本又は利息の支払いが約定支払日の翌日から3ヶ月以上遅延している貸出金
(4)貸出条件緩和債権 債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取り決めを行った貸出金

要管理先とは

金融機関は、銀行法等を根拠とする金融検査マニュアルに基づき、貸出先(債務者)をその財務・経営状況に応じて、その状況の悪いものから、(1)破綻先、(2)実質破綻先、(3)破綻懸念先、(4)要注意先((4-1)要管理先、及び(4-2)要管理先以外の要注意先)、(5)正常先に区分することを求められています。
(1)破綻先、(2)実質破綻先、(3)破綻懸念先、(4-1)要管理先に対する貸出金は、通常、優良な担保・保証で保全されていない限り、不良債権と評価されます。したがって、要管理先に該当するか否かは、事業者にとって非常に重要であり、要管理先に該当すると、優良な担保や保証がない限り、新規融資を受けることは困難になってしまいます。そして、要管理先に該当するか否かも、その貸出金が貸出条件緩和債権に該当するか否かによって判断されます。
このように金融機関の貸出金が貸出条件緩和債権に該当するか否かは、事業者の金融機関からの資金調達に極めて重要な意味を有することになります。

債務者区分

区分 内容 貸倒引当率の目安 債権の取扱い
(1)破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者 100% 不良債権(優良な担保・保証がない場合)
(2)実質破綻先 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者 100%
(3)破綻懸念先 現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画などの進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者 50-70%
(4)要注意先 金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済もしくは利息支払が事実上延滞しているなど履行状況に問題がある債務者のほか、業況が低調ないし不安定な債務者、又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者
(4-1)要管理先 要注意先のうち、3ヶ月以上延滞又は貸出条件を緩和している債務者 15-30%
(4-2)要管理先以外の要注意先 要注意先のうち、要管理先以外の債務者 3% 正常債権
(5)正常先 業績が良好であり、かつ、財務内容も特段の問題がないと認められる債務者 0%

貸出条件緩和債権の詳細と実抜計画(じつばつけいかく)

具体的に、貸出条件緩和債権に該当するか否かの要件の詳細は、「主要行等向けの総合的な監督指針」及び「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に規定され、また金融庁が作成した「貸出条件緩和債権関係Q&A」に具体的な解釈指針が示されています。このうち、重要な要件(除外事由)は、以下のものです。

  • (1)「実抜計画(じつばつけいかく)」に基づく貸出金は貸出条件緩和債権に該当しない。
  • (2)債務者が「実抜計画」を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に実抜計画を策定する見込みがあるときは(「見込み要件」)、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から1年間は貸出条件緩和債権に該当しない。

それでは、実抜計画とはどのようなものをいうのでしょうか。

実抜計画とは

実抜計画とは、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画の略称です。その具体的な要件は以下のとおりです。

(1)「実現可能性が高い」
「実現可能性が高い」とは、以下の要件を全て満たす計画であることをいいます。
  • 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること
  • 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的な支援が必要と見込まれる状況でないこと
  • 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること
(2)「抜本的な」
「抜本的な」とは、概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の債務者区分が「正常先」となることをいいます。この要件については、中小企業の場合、「計画期間が概ね5年以内(5~10年で概ね計画どおり進捗している場合を含む。)で、計画終了後「正常先」(金融機関の再建支援を要せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能となる場合は、計画終了時点における債務者区分は「要注意先」でもよい。)となる経営改善計画が策定されていること」と緩和されています。
かかる要件を充足する実抜計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合には、当該債務者に対する貸出金について、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取り決めがなされたとしても、当該貸出金は貸出条件緩和債権に該当しないこととなります。

見込み要件

また、上述のように、実抜計画を策定していない場合であっても、債務者が中小企業であって、かつ貸出条件の変更を行った日から最長1年以内に実抜計画を策定する見込みがあるときは(「見込み要件」)、当該債務者に対する貸出金は当該貸出条件の変更を行った日から1年間は貸出条件緩和債権に該当しません。
かかる「見込み要件」を充足するためには、銀行と債務者との間で合意には至っていないが、債務者の経営再建のための資源等(例えば、売却可能な資産、削減可能な経費、新商品の開発計画、販路拡大の見込み)が存在することを確認でき、かつ、債務者が経営再建計画を策定する意思がある場合である必要があります。

実抜計画の策定の検討

実抜計画の策定には、事業内容、事業環境の精査等が必要になり、通常業務で多忙な中小企業の方が、実抜計画の策定に踏み切るには大きなハードルがあるかもしれません。しかし、思い切って実抜計画の策定を実現すれば、その場しのぎの資金繰り、自転車操業から解放され、本業に集中して取り組むことが可能になります。資金繰りに苦しんでいる中小企業においては、実抜計画を策定することを是非、ご検討下さい。

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