一般民事・刑事事件の基礎知識

配偶者の法定相続分と遺言の必要性

平成27年1月から相続税額を算出する際の基礎控除額が大幅に引き下げられ、東京都内で一戸建てやマンションを所有している方が死亡した場合、ほとんどのケースで相続財産(遺産)の総額が基礎控除額を超え、相続税が発生することとなるため、相続に対する社会的な関心がとても高まっているようです。向井理・榮倉奈々主演で「遺産争族」という連続テレビドラマも開始されました(平成27年10月~)。
本稿では、「配偶者の法定相続分」に従った相続が親族間に著しい不公平感を生じさせる場合があることと、かかる不公平感を減少させるための対策としての遺言の作成について簡単にご説明します。

1.配偶者の法定相続分

日本においては、配偶者の法定相続分が優遇されていると言われています。さらに、相続税の点からも配偶者は優遇されており、配偶者が法定相続分の範囲で相続した場合、または相続財産の評価額が1億6000万円以下である場合、原則として相続税が課されません(「配偶者特別控除」)。

(1)
被相続人(死亡者)に配偶者と子供がいる場合、配偶者の相続分が2分の1(50%)となり、
子供が何人いても、子供たちは残りの2分の1(50%)を等分することになります。
(2)
被相続人に子供がなく、配偶者と親がいる場合、配偶者の相続分が3分の2(約66.7%)となり、親は残りの3分の1(約33.3%)を相続し、両親ともに健在であれば、6分の1(約16.7%)ずつしか相続できません。
(3)
被相続人に子供も親もおらず、配偶者と兄弟姉妹がいる場合、配偶者相続分が4分の3(75%)となり、兄弟姉妹は残りの4分の1(25%)を等分することになります。

2.夫婦関係の多様化と遺言の必要性

もちろん、配偶者の長年の内助の功、等に鑑み、配偶者の法定相続分が優遇されていても、全く不公平感のないご家族もたくさんあると思います。他方で、夫婦関係は多様化が進んでいるにもかかわらず、配偶者であるか否かは入籍の有無という形式的な基準で判断されるため、次のような事例では、法定相続分による相続によって、看過できない不公平感が生じることがあります。

(1)
配偶者との離婚調停・離婚訴訟の係属中に、被相続人が死亡した場合
(2)
被相続人が配偶者とは長期間別居しており、すでに別の異性と事実婚状態にある場合
(3)
婚姻期間が極めて短く、かつ被相続人と配偶者の間に子供がいない場合に、配偶者と親、又は配偶者と兄弟姉妹で相続をするとき

さらに最近では、日本への入国、永住権取得を目的として、外国人が日本人と入籍し、入国した後、その日本人と同居もしない 「仮装婚姻」 「偽装結婚」というべき夫婦関係も増えているようです。仮装婚姻等は無効ですが、婚姻無効確認訴訟の判決で無効が確認されるまでは有効と取り扱われるため、他の相続人は大変な手間と時間をかけて、当該外国人と係争を続けることになります。

以上のような場合の法定相続分による不公平感は、被相続人が生前に遺言を作成し、配偶者に相続させる遺産の割合を減少させることにより、かなりの程度、緩和することが可能になります(ただし、配偶者の『遺留分(いりゅうぶん)』に注意が必要です。)。自己の死後の事象に予め備えることは、なかなか難しいところもありますが、戸籍上の配偶者が遺産のほとんどを相続することに疑問を感じられる方は、是非、遺言作成をご検討下さい。


  * なお、遺留分との衝突・調整を回避する手段として、「信託契約(家族信託)」を活用する
   ことも考えられます。
     しかし、現状では信託契約の活用が十分に行われていないこともあり、信託契約であれば
   遺留分との衝突・調整を回避できると、判例・解釈上断定はできない点にご留意ください。

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