労働問題等の基礎知識

就業規則の不利益変更

企業で働く労働者の、労働時間、賃金などの労働条件の詳細は、企業が定める就業規則において規定されています(労働基準法89条)。企業の業績が悪化した場合などに、企業が労働条件の切下げを行うには就業規則の不利益変更が行われることになります。この企業が(一方的に)行う不利益変更後の就業規則が労働者に適用されるかについては、就業規則の法的性質に関する議論も絡めて、多くの裁判例及び学説において議論がなされてきました。

そして、下に記載した秋北バス事件最高裁判決において、不利益変更された就業規則は労働者に適用されないという原則が示される一方、変更後の就業規則の内容の合理性を条件として、例外的に適用が認められるとの判断が示されました。これを受けて、その後の裁判例の中で「合理性」の判断基準の定式化が進められ、平成19年の労働契約法制定により、「合理性」の判断基準が法制化されました。
2008年秋のリーマン・ショック以降、業績悪化に苦しむ企業が労働契約法10条に定められた合理性の判断基準によらず、賃下げ等の労働条件の引下げを行っていると仄聞します。法律上無効な賃下げを行っていた場合、過去2年間に遡って(無効な退職金額の引下げの場合、過去5年間に遡って)、差額分の賃金の支払を労働者から請求される可能性があるので、十分にご注意下さい。

就業規則の不利益変更の拘束力・要件

秋北バス事件最高裁判決(最大判昭和43年12月25日民集22巻13号3459頁)

(就業規則の拘束力の根拠について)就業規則は、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるものというべきである。
(就業規則の不利益変更の拘束力について)使用者による新たな就業規則の作成又は変更によって、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されない。しかし、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質から、変更後の就業規則の条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。

秋北バス事件最高裁判決以降の裁判例における変更後の就業規則の合理性の判断要素

変更の必要性(その内容・程度)
変更の内容(労働者の不利益の内容・程度)

  • 関連する労働条件の改善の有無・内容・程度
  • 変更の社会的相当性

 労働組合との交渉経緯、多数従業員の受容の有無

労働契約法における法制化(平成19年)

  • 第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りではない。
  • 第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りではない。


 

 

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